「WiMAXは繋がりにくい」という話しを聞きます。
WiMAXは他のサービスにはない「使い放題」を実現する「ギガ放題プラン」がありますが、繋がらなければ意味がありません。
たしかに、WiMAXが使う電波は「データ通信の効率が良い」という使い放題に適した特性がありますが、その反面「障害物に当たると電波が反射してしまう」という特性もあります。この「障害物に反射する」という特性から「WiMAXは繋がりにくい」と言われる現象が起きます。
ただし、「WiMAX2+通信サービス」というサービス全体の仕組みを見ると、WiMAXは「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」という通信方式を提供することで、スマホと同様「どこでも繋がる」仕組みを提供しています。
この記事ではWiMAXがどこでも繋がりやすくなる「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」について、詳しく説明していきます。
ハイスピードモードとハイスピードプラスエリアモード
ハイスピードモードはWiMAX標準の通信モード
WiMAXのハイスピード(HS)モードとは、WiMAXの標準的な通信方式です。
ハイスピード(HS)モードでは、通称「WiMAX」と呼ばれる電波だけを使って通信します。
ハイスピードプラスエリアモードは繋がりやすいスマホの電波
ハイスピードプラスエリア(HS+A)モードは、WiMAXの電波に加えてauスマホで使われる「au 4G LTE」の電波も使う通信モードです。
WiMAXの電波と一緒に(束ねて)使うこともできるし、「au 4G LTE」だけで通信することもできます。
束ねて使うとWiMAXだけで通信しているときよりも高速通信ができるようになります。
WiMAXの電波が届かない場所でも「au 4G LTE」が届く場所なら、WiFiルーターとして通信することができます。
2つの通信モードの使い分け
WiMAXでは通常は「WiMAXの電波のみを使うハイスピード(HS)モード」が標準となります。この場合でも最高速度558MbpsというWiFiでは最速クラスの通信が可能です。
「でも、もっと速い通信をしたい!」という場合には「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」にすることで、WiMAXの最高速度558Mbpsに加えて「au 4G LTE」の通信が加わることで、最高速度1.2Gbpsという光回線以上の通信ができるようになります。
また、「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」は「au 4G LTE」だけでの通信もできます。
これは、つまり「WiMAXの電波が届かない場所でもスマホの電波でWiFiが使える」ということを意味します。
WiMAXが通信で使う電波の話し
WiMAXの電波、FDD-LTEとTDD-LTE
「ハイスピードモード」と「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」を理解するために、ちょっと電波の話しを聞いてください。
LTE | BAND | 周波数帯 |
---|---|---|
FDD-LTE ※au 4G LTE |
BAND1 | 2.1GMHz |
BAND11 | 1.5GHz | |
BAND18 | 800MHz | |
BAND26 | 800MHz | |
BAND28 | 700MHz | |
TDD-LTE ※WiMAX |
BAND41 | 2.5GHz |
BAND42 | 3.5GHz |
WiMAXの通信で使う電波には「FDD-LTE」という電波と「TDD-LTE」という電波があります。
「FDD-LTE」は繋がりやすいスマホの電波「au 4G LTE」です。「TDD-LTE」は使い放題ができるWiMAXの電波です。
FDD-LTEの特徴
音声通話に強い電波
FDD-LTEは繋がりやすいスマホの電波「au 4G LTE」と呼ばれる電波です。スマホの音声通話(VoLTE)が使う電波です。
FDD-LTEは「船舶電話」「自動車電話」から発展してきた電波で、主に音声通話を行うために利用されてきました。
そのため、「音声通話」について優先的に帯域を使い高品質の音声通話ができますが、データ通信については効率があまり良くない電波です。
障害物に強い
また、FDD-LTEは「障害物に強い」という特徴があります。これはFDD-LTE」という通信方式の特徴ではなく、FDD-LTEが割り当てられている周波数帯(BAND)が低周波数であることが理由です。
FDD-LTEは低周波数帯の電波を使っているので、障害物があっても緩やかに回り込んで障害物の裏・陰にも電波が届きます。
TDD-LTEの特徴
データ通信に強い電波
TDD-LTEは「無線通信」から発展してきた電波です。
なので、音声通話での利用はありませんが、データ通信についてはFDD-LTEよりもデータ通信の効率が良く高速通信が可能という特徴があります。
このTDD-LTEはWiMAXをはじめ、ソフトバンクのソフトバンクエアーやポケットWiFiなどのデータ通信専用サービスで主に使われています。
障害物に弱い
TDD-LTEはFDD-LTEとは反対に「障害物に弱い」という特徴があります。これはTDD-LTEがFDD-LTEよりも高周波数帯を使っているからです。
TDD-LTEは高周波数帯の電波を使っているので、障害物に当たると反射されてしまい障害物の陰や裏には電波が届きにくいという特徴があります。
WiMAXが「使い放題」できる理由
WiMAXが「使い放題」というサービスを提供できる理由は、このTDD-LTE(WiMAX)を使っているからです。
音声通話でも使われるFDD-LTE(au 4G LTE)は音声通話を優先的にしているため、データ通信の効率があまり良くありません。
さらに、大切なインフラである音声通話サービスに障害が発生すると、通信キャリアは総務省に叱られてしまいます。
このため、「使い放題」のデータ通信サービスではFDD-LTEを使って「使い放題」にすることができません。
WiMAXが「使い放題」を実現できるのは、「データ通信の効率が良い」「音声通話と分離されている」というTDD-LTE(WiMAX)を使っているからです。
WiMAXが「繋がりにくい」と言われる理由
一方で、スマホの電波「au 4G LTE」と比べるとWiMAXの電波は障害物に弱いという特徴があります。このため、スマホの電波が入るのにWiMAXが繋がらない、という場所がでてくることになります。
スマホの電波「FDD-LTE(au 4G LTE)」は障害物があっても電波が障害物に回り込んで電波が浸透していきます。ビルの陰や地下街などでも同じです。
WiMAXの電波「TDD-LTE」は障害物があると反射されてしまうため、エリア内であってもビルの陰や地下街などに電波は入り込んでいくことが難しい電波です。
この違いが「スマホと比べてWiMAXは繋がりにくい」と言われる理由です。
ハイスピードプラスエリアモードの使い方
ハイスピードプラスエリアモードの特徴
TDD-LTEを使った通信方式「ハイスピード(HS)モード」は「使い放題ができる」けど「障害物に弱い・繋がりにくい」という通信方式です。
この弱点をカバーする通信方式が「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」です。
「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」は、WiMAXの強みであるWiMAX(TDD-LTE)と繋がりやすいスマホの電波(FDD-LTE)を同時に使う、またはスマホの電波(FDD-LTE)だけを使う通信方式です。
同時に使えば速くなる
同時に使えば、WiMAXだけで通信する場合の最高速度558Mbpsに加えてスマホの電波の通信が加わって、最高速度1.2Gbpsを実現できます。
スマホの電波だけでもWiFiが使える
また、WiMAXの電波(TDD-LTE)が届かない場所でも、繋がりやすいスマホの電波(FDD-LTE)だけで通信できるので、WiMAXがちょっと苦手とするビルの陰や地下街などでも安定してWiFiを使うことができるようになります。
ハイスピードプラスエリアモードの注意点
ハイスピードプラスエリア(HS+A)モードは速い!繋がりやすい!
ハイスピードプラスエリア(HS+A)モードは、このように「使い放題ができる」WiMAXの電波と「繋がりやすいスマホの電波」を一緒に使う通信モードです。
これにより、「WiMAXだけで通信するより速くなる」「WiMAXの電波が届かなくてもスマホの電波だけで使える」というメリットがあります。
ハイスピードプラスエリア(HS+A)モードは月間7ギガまで
その反面、スマホの電波(FDD-LTE)は「使い放題」にはできない電波です。
なので、「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」を使った通信には速度制限が設けられています。月間で「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」による通信が7GBを超えると128Kbpsに速度制限されてしまいます。
7ギガを超えるとハイスピード(HS)モードも速度制限される
この速度制限は使い放題の「ギガ放題プラン」を契約していても速度制限されます。
また「ハイスピード(HS)モード」での通信も速度制限されてしまいます。
よって、「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」の通信は月間で7ギガ以上使うとかなり困ったことになります。
LTEオプション料金が発生する
また「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」はスマホの電波(FDD-LTE)を使ったサービスなので、この「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」を使って通信する場合にはスマホの電波の利用料として「LTEオプション」が必要となります。
この「LTEオプション」は「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」での通信を行った月だけ課金されるオプションで、通常は月額1,105円となります。
ただし、現在のWiMAXでは3年契約プランでは通常料金の中に「LTEオプション料金」が含まれているため、実質無料で使えることになります。
ハイスピードプラスエリアモードの便利な使い方
通信量カウンター
「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」で通信する場合、月間で7ギガ以上通信すると速度制限(128Kbps)されてしまいます。この場合の速度制限は「ハイスピード(HS)モード」での通信も速度制限の対象となります。
この速度制限を回避する機能として「通信量カウンター」という機能があります。
事前に「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」での通信で利用可能なギガ数を設定しておくことで、そのギガに達したら「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」が終了する、および「ハイスピードプラス(HS+A)エリアモード」に切り替わらない、という機能です。
初期値は「6ギガ」に設定されていますが変更可能です。いったん3ギガ程度に到達しておいて3ギガ到達した後に再度「6ギガ」などと設定しなおすこともできます。
ワンタイムHS+Aモード
このような「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」の使い過ぎに対するリスクに対応するため、最近のWiMAXルーターには「ワンタイムHS+A」ボタンという機能があります。
これは、WiMAXルーター本体やスマホアプリからワンタッチでハイスピードプラスエリア(HS+A)モードに切り替わる機能ですが、同時に以下の条件で「ハイスピード(HS)モードに戻る」という機能を併せ持っています。
- ルーターが休止状態になったとき
- ルーターの電源がオフになったとき
- 約10時間経過した場合
- ルーターが再起動したとき
- 通信量カウンターの設定ギガ数に到達したとき
この「ハイスピード(HS)モードへ自動的に戻る」機能によって、「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」の使い過ぎを防止してくれます。
もちろん、ルーター本体やスマホアプリからワンタッチで「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」を解除することもできます。
本体操作は電源以外はスマホアプリで可能
これらを含み、最新型ルーターではルーター本体を操作しなくてもスマホアプリでの操作ができます。
スマホアプリでWiMAXの電波状態を確認し、電波が弱ければ「ワンタイムHS+A」機能で通信モードを切り替える。
WiMAXの電波が入る場所に移ったら「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」を終了する。
既定の時間の無通信で休止状態(スタンバイ)となったルーターを一発起動する、などもスマホアプリで利用することができます。
ハイスピードプラスエリアモードのまとめ
ハイスピードプラスエリア(HS+A)モードの仕組み
WiMAXの標準的なデータ通信である「ハイスピード(HS)モード」はTDD-LTE(通称WiMAX)という電波を使って通信しますが、「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」はこのWiMAXの電波に加えて繋がりやすいスマホの電波(FDD-LTE/au 4G LTE)も一緒に使って通信します。
ハイスピードプラスエリア(HS+A)モードのメリット
ハイスピードプラスエリア(HS+A)モードの通信では、標準的なWiMAXの電波に加えて繋がりやすスマホの電波を使って通信します。
そのため、以下2点のメリットがあります。
- 2つの電波を同時に使うことでより高速なデータ通信ができる(最大1.2Gbps)
- WiMAXの電波が届かない場所でもスマホの電波でデータ通信ができる
ハイスピードプラスエリア(HS+A)モードのデメリット
一方でデメリットもあります。
ハイスピードプラスエリアモードは繋がりやすいけど使い放題にはできないスマホの電波を使うため、使い放題の「ギガ放題プラン」での契約であっても速度制限ルールが存在します。
- ハイスピードプラスエリア(HS+A)モードでの通信が月間7ギガを超えると速度制限
- この場合、標準的な通信方式「ハイスピード(HS)モード」の通信も速度制限される
- 使い放題の「ギガ放題プラン」でも速度制限される
- ハイスピードプラスエリア(HS+A)モードの通信を利用した月は別途「LTEオプション料金(月額1,105円)」が請求される
- ※ただし3年契約プランの場合は「LTEオプション料金」は標準料金に含まれている(実質無料)
このように、ハイスピードプラスエリア(HS+A)モードでの通信は月間7ギガの上限に注意する必要があります。
ハイスピードプラスエリア(HS+A)モードの便利な使い方
WiMAXの繋がりにくい場所では活用しよう!
ハイスピードプラスエリア(HS+A)モードの活用方法は「WiMAX(ハイスピードモード)が繋がりにくい場所で使う」「使ったら元(ハイスピードモード)に戻す」という点です。
この「使ったら元に戻す」ことでハイスピードプラスエリア(HS+A)モードでの月間7ギガ以上の通信を行わないようにする注意・工夫が必要です。
通信カウンタ連動機能を活用
この「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モードでの通信を月間7ギガに抑える」ための便利な機能が「通信量カウンタ連動機能」です。
WiMAXの専用ルーターは非常に高機能で、便利な機能がどんどん追加されてきます。
「通信量カウンタ連動機能」も新しい機能で、「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モードでの通信量(ギガ)が設定値に到達すると自動的にハイスピードモードに戻す」という機能です。
この機能により、ハイスピードプレスエリア(HS+A)モードでの通信の使い過ぎを防ぐことができます。
初期値は「6ギガ」に設定されていますが、任意のギガ数に変更することができます。
さらに「ワンタイムHS+A」機能
さらに、通信カウンタ連動機能に加えて「ワンタイムHS+A」機能があります。
「ワンタイムHS+A」機能は、WiMAXの電波が弱くなったかな?と思ったときにルーター本体またはスマホアプリからワンタッチで「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」に切り替えることができます。
さらに、以下の条件で自動的に「ハイスピードモード」に戻してくれます。
- ルーターが休止状態になったとき
- ルーターの電源がオフになったとき
- 約10時間経過した場合
- ルーターが再起動したとき
- 通信量カウンターの設定ギガ数に到達したとき
スマホアプリで全部できる
使い過ぎを防ぐ機能
「WiMAXは繋がりにくい」という話しも聞きますが、「使い放題」の通信サービスは「繋がりやすいスマホの電波」と比べると確かにつながりにくい特性があります。電波が障害物に反射するからです。
この点を改善するために、WiMAXには「ハイスピードプラスエリア(HS+A)モード」という機能が追加されました。「使い放題のWiMAX」と「繋がりやすいスマホの電波」を一緒に使って、スマホと同じエリアでデータ通信ができる通信モードです。
そしてWiMAXルーターはこの便利な機能が簡単に使えるように機能追加やスマホアプリの改善を行っています。
バッテリーを節約する機能
WiMAXルーターは無通信時間が続くと自動的に休止(スタンバイ)状態になってバッテリーを節約してくれる機能があります。
ルーターが休止状態の場合でも、復帰はスマホアプリからワンタッチでできます。
そしてWiMAXが繋がりにくい場所に入っても「ワンタイムHS+A」機能によってスマホからワンタッチでハイスピードプラスエリア(HS+A)モードに切り替えることができるし、自動的にハイスピードモードに戻る機能も備えています。
スマホアプリでHS+Aを使い倒す
「WiMAXは繋がりにくい」という方、ぜひスマホアプリとハイスピードプラスエリア(HS+A)モードを活用してみてください。
3年契約の方は「LTEオプション無料」、スマホアプリはもちろん無料です。
- WiMAXの繋がりにくい場所でもスマホの電波を使えます!
- 「通信量カウンタ連動機能」で使いすぎを防ぐことができます
- 「ワンタイムHS+A」機能で、簡単切り替え・自動切換えができます
- ルーター本体を触らなくてもスマホアプリで全部できます
これらの機能を実機「Speed Wi-Fi NEXT WX05」でレビューしています。